物語の紹介
民話語り 【さるかにがっせん】
昔あるところに、性悪な猿がおった。
「ウッキッキー!ウッキッキー!どうも皆さんこんにちは。おいら、この辺いったいをとりしきっております、猿ドンともうします。どうぞ、よろしくお願いします。♪俺は猿ドーン、ガキ大将〜♪」
とそこへ、蟹チャンがお得意の横歩きで‘チョキチョキチョキチョキ’やって来た。
「おー!蟹チャン!」
「おー、猿ドン久しぶり。」
「おー久しぶりじゃ。お前いいところに来たなぁー!そうじゃ、今日の遊び相手はお前に決〜めた。」
せっかちな猿は蟹の事などお構いなしに、どんどんどんどん歩いて行く。蟹は‘チョキチョキチョキチョキ’と必死に付いて行った。すると、道端の草むらに落ちているおむすびにぶつかった。

「おーい、猿ドーン。」
「何だよ、早く来いよ。」
「違うんじゃ、おら良いもの見つけただー!」
「何?良い物?」
「おむすびだカニー!」
「何!おむすびだカニ?見して、見して!本当だ、おむすびだ!」

猿は羨ましくてしょうがない。
「くそっ!こいつ、蟹のくせに良いもの見つけやがったなぁー!よし!オイラも何か探そう。」
そこら中を捜して歩いた。オー!あった!っと思って拾い上げてみたが、それは、柿の種だった。この欲張りな猿の事、蟹が持っているおむすびを食べたくてしょうがない。

「なー、蟹チャン蟹チャン!」
「何だカニ。」
「お前が持っているそのおむすびと、オイラが持っているこの柿の種を交換してやるよ。」
「いやだカニー。オラー、このおむすびがいいだカニー。」

何だと…。自分の申し出をあっさりと断られてしまった猿は悔しくてしょうがない。うーん、生意気な…・。何とかしてこの分からずやの蟹を言いくるめなければ、あのおにぎりは手に入らない。何て言おうかなぁー…。そうだ!
「なー、蟹チャン。」
「何だカニ。」
「お前さあ、本当にそのおむすびでいいの?」
「良いだカニ。」
「へー、変わってるね。」
「何でだカニ?」
「お前の持っているそのおむすびは、ここで食ってしまえばそれで終わりだ。でもオイラの持っているこの柿の種は違う。これを地に植えておけば、やがて芽を出し、それが木になって、その木には たくさんの柿の実がなるんだ。そしたらオイラはその柿の実を一人で食いたいほだいじゃないか。あー、柿の種を拾って良かったー!」

この猿の野郎、実に口がうまい!
「今なら取り替えてやらない事もないんだがなー。」

蟹チャンもついつい騙されてしまって、おむすびと柿の種を交換することにした。猿の野郎は、早々におむすびにかぶりつくと、

「おー!うめぇー!それじゃー、腹もいっぱいだし、山へ帰ろう。」
上機嫌で山へと帰って行った。


さて、蟹チャンはと言うと、その柿の種を持ち帰り、庭の隅っこに植えた。そして、

「♪生えなきゃ ほじくるぞー♪」

と唱えては水をやり、鍬を‘ゴン’とそこに置いた。すると、柿の種はあの鍬でほじくられちゃ困ると思ったのか、‘ニョキニョキ’っと芽を出した。今度は、
「♪大きくならないと はさみ切る♪」
と唱えてはこやしをやり、はさみを‘チョン’と置いた。すると、柿の野郎はあのはさみではさみ切られちゃ困ると思ったのか、‘ムクムクムクムクー’っとでかくなった。蟹チャンが一生懸命世話したかいあって、やがて、その柿の木には見事な実がなった。それも鈴なりになった。

やがて秋になり、その柿の実が赤く熟れ始めた。蟹チャンは、高い所でうまそうに熟れている柿を、ぼんやりと眺めていた。すると…・、

「ウッキッキー!」
あっ!やって来た!

「なかなか良い色に熟れやがったなぁー。よーし、ちょっくら味見でもしてみるか。」
とか何とか言って、ヒョイヒョイっと木に登り、食べ頃の柿を見付けては、むしっては食い、むしっては食いしている。

「うめぇー!!」

それを下から見ていた蟹チャンは、
「おーい、猿ドン。味の方はどうだい?」
「なかなかよく熟れてて美味いぞ。」
「そうかい、それは良かった。おい猿どん、おらこの通り横這いで木に登れん。オラにも一つ、うまそうな柿を取っておくれよ。」
「うん、いいよ。」

猿の野郎は青たん坊の柿をむしり取り、‘ポイッ’っとほおり投げた。蟹チャンがそれを食べてみたところが…、‘ブー’とても渋くて食えない。

「おーい、猿ドン。」
「何だよ、うるさいな。」
「オラこんなんじゃダメだ。もっと甘いやつを取っておくれよ。」
「はいはいはい、甘いやつを取ればいいんですね。」

また猿の野郎は青たん坊の柿をむしり取り、

「お前さんは、この青たん坊の柿でもくらっとけー!」

蟹の背中をめがけて思いっきり投げつけた。‘グショーン’青たん坊の柿は蟹の背中に命中し、蟹は甲羅が砕けて死んでしまった。

「さあ、腹もいっぱいになったし、山へ帰ろっと。」

さあさあさあさあ…、それからどうなったか…。
なんと、死んだ蟹の腹の下から‘ぐよぐよぐよ’、「お母が死んだー!お母が死んだー!」と、たくさんの子蟹が生まれ、泣き叫びだした。泣き疲れた子蟹がしょんぼりしていると…・、今度はどこからか、‘ブーン、ブーン’という迫力のある音が聞こえてくる。しばらくすると、黒光りした胴体にイカツイ顔つきの熊ん蜂どんがやってきた。

熊ん蜂
「そこの子蟹ちゃん、一体どうしたんだい?」
子蟹
「あ、熊ん蜂のおじちゃん…。実は…。」
熊ん蜂
「何だと?…・お前のお母が、猿の野郎に柿をぶつけられて死んじゃった?オイ、その猿って、山の上に住んでるアイツか!あー…、多少の悪さもするが可愛いところもあって見逃してやってはいたんだが、そいつはちょっと度が過ぎるってもんだ。許せねぇー。よーし分かった!俺様がお前らの仇を討ってやる。待ってろよー!」

熊ん蜂どんはそう言うと、早速‘ブンブカブンブカ’飛び回り、みんなにその事をを知らせた。「熊ん蜂どんがそこまで言うなら。」と、栗どんはコロコロと、縫い針どんはシクモク、牛のクソどんはペッタリペッタリ、臼どんはゴテーンゴテーンとやって来た。そして、熊ん蜂ドンを先頭に、力強い仲間が猿の家へと向かったのだ。

さて、猿の家では、猿の婆さんがただ一人、囲炉裏の火にあたっていた。婆さんに、
熊ん蜂
「婆さん、猿ドンはどこかへ行ったんだい?」

と聞くと、婆さんは、
猿の婆さん
「うちの子は、今日は山へ仕事をしに行って、もうすぐ帰って来ると思うんじゃが。さあさあ、上に上がって待ってておくれ。」
婆さんがそう言うので、みんなは家へと上がり込み、‘コソコソ’っと作戦を練った。そして、婆さんが目をはなしたすきに、それぞれが、それぞれの配置についた。


そうこうしているうちに、猿が山から帰ってきた。

「おー、寒い寒い寒い。あー、火に当たろう。」

猿はのん気に囲炉裏の火に当たりに行ったが、火の中で待ち構えていた栗どんは、今か今かとそのタイミングを見計らっていた。

「はぁー…。(猿が股を開ける)」

猿が股を開いたその瞬間、‘パチーン’とはねて猿の股の中に入り込んでやった。

「熱いちいちい!なんだこりゃ!熱いちいちい!」

水で冷やそうと台所へ飛んで行き、水がめの中に手をつっこんだ。
(猿は、水がめの水を手ですくい、股間にかける。)
すると、「おっ母の敵だ!」と、子蟹がチョキチョキっと鋏こんだ。

「あいたたたた!」

こんどは、その傷に味噌を塗ろうと、味噌部屋へ飛んで行った。味噌桶の蓋を取ると…、

熊ん蜂
「オイ猿野郎、こっちだよ。」
熊ん蜂
「俺だよ、熊ん蜂だよ。」
「はぁっっっ…・・、ぎゃー!!!!いたたたたたっー!!!」

こりゃもうダメだ。さすがの猿もどうすることも出来ない。布団にもぐり込んで寝ようとした…・、すると、‘シクモクシクモク’
「あいたたたたっー!!」

縫い針どんが猿の体を刺したのだ!
「いててててっ…・・」

とうとう猿の野郎は泣き出した。
「おばーちゃーん。」
猿の婆さん
「何だよ、あんたはさっきからピーピーピーピーやかましい子だね。川にでも行って水でも浴びてきな。そうすりゃ、少しはマシになるだろうよ。」

この家にいると何が起こるか分からない。猿は、力を振り絞って急いで外へ出ようとしたが、土間口先で待ち構えていた牛の糞どんが、それを許すはずもない。身を呈して、猿の足を包み込んだかと思うと、そのまま‘ステーン’と、ひっくり返してやった。

「痛ててててて。」

頭を強く打って悶え苦しんでいると、今度は何処からか、‘ゴローンゴローン’体の芯まで響き渡るような音が聞こえてくる。見上げると、屋根の上から大きな影が姿を現した。その影は、猿の居場所を確認すると、そいつをめがけていっきに飛び降りた。

「臼でござーる。」

‘ズドーン’

猿は、臼の下敷きになり、目ん玉も何もかも飛び出して死んでしまったそうだ。

人に対してした事は、めぐりめぐってきっと自分にかえって来る。

候えばくばく