【代表挨拶】 

 私たちは祖先の暮らしの延長上に生きており、未来は、私たちの暮らしの延長上にしかありません。伝統文化も、今ある自然も、私たちの命も、これらを今につないできたのは「人」でした。また、人の命の営みは、恵みを与えてくれる自然への畏怖や感謝とともに、死者や未来の人をも含む他者を想う気持ち、愛情によってこそ、いにしえより今日まで紡がれてきたのではないかと考えた時、社会とは私たち自身のこと、一人ひとりの想いで成り立っていて、その想いのやりとりに、命や心の豊かさがあるのだろうと気がつきました。社会は誰かがつくって動かしているものでなく、主体的に生きる一人ひとりが社会の基盤をなしていく。自分の価値観を持ち、自立した個人と個人が関わりあって連帯していくことは、自分自身を自分一人で生きていこうとするよりも、暮らしやすくて温かい社会をつくっていくことです。

 自分の命と自然とのつながりを確認しながら感謝と祈りを重ねてきた先人の暮らしには、あらためて、これからの豊かさのヒントがあると考えます。先人は、森を切り拓くときにも、恵みを与えてくれる森への感謝と祈りを忘れないために、その一部を残して「鎮守の森」とし、祈りをささげてきました。NPOちんじゅの森は、これまでもこれからも、人と人、自然と人、異なる世代、過去・現在・未来とのつながりを確認する場所、それを伝えていく場所でありたいと思います。 

​ 2019年4月より新たな拠点となった、ちんじゅの森サロン「ほぐほぐ」は、神様にお供えするお米や野菜をつくる田んぼと畑のある場所です。お米や旬の野菜を育てることは、種と土と太陽と水の恵みに、人が五感をつかって働きかけていく営みです。私たちの命は自然の循環の一部であることを思い出し、季節のうつろいに合わせて暮らしをつくる。人が集い、食し、語らい、学び合い、芸術を味わい、心豊かな温かい時間を重ねて、次の世代につないでいけるコミュニティとしての「ちんじゅの森」を育んでいきます。 

【これまでの歩み】 

 「鎮守の森」とは、先人たちが森を切り拓くとき、恵みをもたらしてくれる森への感謝と祈りを忘れないために、森の一部を残し祈りをささげ場所です。そこでは村のお祭りが行われ、豊作を祈り、収穫に感謝し、自然とのつながり、人とのつながり、異なる世代、先祖や子孫とのつながりを確認してきました。 

 NPO法人ちんじゅの森の活動は、前代表(中尾伊早子:現理事)が伊勢神宮式年遷宮のシンポジウム事務局の仕事をした際に、遷宮が神聖な木を敬い大切に再利用するという持続可能な循環型社会の精神を体現していることに感銘を受け、自然と共生してきた日本人の知恵を継承する活動を行いたいと考えたことから始まりました。そこで、都会のオアシスとなっている明治神宮の森が人の手によってつくられたことを知ってもらい、今度は私たちの手でこうした森を作る取り組みを支援しようと2000年に「ちんじゅの森チャリティコンサート」を開催しました。このコンサート以降も活動を続けることを決め、翌年NPO 法人ちんじゅの森を設立しました。その後は、日本各地での民話語り、赤坂日枝神社では中秋の名月に神話語り等の舞台を行い、民話語り・神話語りは全国に展開しました。伊勢の遥拝所である東京大神宮では、1300年以上続く神宮の伝統行事「式年遷宮」を伝えるフォーラムを8年間にわたって開催しました。 

  そして活動20周年を迎えた年、自然と共生する中で日本人が大切にしてきた心や、季節や風土にあった生活様式を見つめ直し、それを過去から未来へとつなぐため、活動拠点を文京区目白台に設けることになりました。東京大神宮の神職さんたちがお供え物をつくる田畑のある一軒家をご提供いただいてリノベーションし、「ちんじゅの森サロン『ほぐほぐ』」と命名しました。世代を超えて人々が集い、語り合いながら先人たちの知恵を学び実践する、また自分たちの手で作物を育て、調理し、食べることで生きることの原点を見つめ直す―時間をつなぐ、暮らしをつくる―ための場所として運営しています。 

【活動拠点「ほぐほぐ」】 

 「寿ぐ・言祝ぐ(ことほぐ)」は、おめでたい事柄を言葉で祝福するときに用います。また、あらかじめ祝うことを「予祝(よしゅく)」と言い、古来、日本の年中行事に組み込まれてきました。お花見も予祝の一つ、春の満開の桜で秋の豊かな実りを祈る年中行事です。現実がよくなるようにあらかじめ祝うこと、その祈りを込めて、「祝ぐ(ほぐ)」を重ねて、「ほぐほぐ」と名付けました。人と人が同じ空間に集い、日本の生活文化を思いながら、生きることの源である「食する」ことを基本に、ゆるやかなつながりを紡いでいくことの先に、私たちのこれからの豊かさがあると考えます。 

 土間があり、キッチンがあり、料理をつくって食べることができます。天井が高く、ふるさと新しさがコントラストをなし、これからの味わいの変化が楽しみな建物です。  

年中行事や季節の保存食づくり、モノづくり、フィルム上映会、寄り合いなど、さまざまな集いの場を開催してまいります。 

 目白台は、かつて大名の下屋敷が多かったという土地で、旧熊本藩細川家伝来の美術品が収蔵された永青文庫、肥後細川庭園が近くにあります。椿山荘の木々の豊かな広い庭園を歩いて抜ければ、桜の時期が楽しみな神田川沿いに出られます。神田上水の改修工事に携わったといわれる松尾芭蕉の関口芭蕉庵など、季節を感じながら散歩するにもいいところです。東京カテドラル聖マリア大聖堂、日本女子大学成瀬記念講堂などは、建築委好きの方にもおすすめです。 

 皆さんもぜひ一度お散歩がてら現地に足をお運びいただき、NPO法人ちんじゅの森の活動にご参加いただければ幸いです。 

東京都文京区目白台1-22-2

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